ふり返りトーク#8

オット やっと、出発までこぎつけました。

けら ほんと、やっとだよー。ここまで、50ページ以上かけて、まだ出発できてなかった(笑)

オット いきなり、お母さんの「練馬」話で、娘がピリピリしていますね。イタリアに着いても、まだ孫の話が止まらない。

けら 地球の裏側まで来てね……(笑)。

ここまで、何時間も何時間も飛行機に乗ってきたのに、まだ心が自宅にいてさぁ、旅の初日は、いちばんワクワクする日なのに。

オット 今、考えると、お母さんも緊張してたのかもしれないけどね。

けら それは、考えてなかった……。

オット 連載の前のほうでも「会うとケンカになる」って書いてたけど、なんでかね。

けら えーとね、想像のなかで、お母さんは、すごくいたいけで、守ってあげなきゃならない存在なんだけど……。

オット うん。

けら 会うと、ぜんぜん違うんだよ。

オット (笑)。

けら じっさい会うと、すごく憎たらしい。

オット (笑)ふつう、お母さんが好きな人は、もっとお母さんにやさしいよ。

けら 私は、たぶん「想像のお母さん」に、夢中なんだよね。

オット ああ……。

けら 子どものころ、お母さんは、強くてカンペキな人に見えてたんだよね。すごく影響を受けたし、ずっとお母さんに認められたい、と思ってきたの。

でも、私が高校生になったあたりから、もう、お母さんとは毎日ケンカで。

オット 「あたしンち」のイメージの原型だよね。

けら そう。ともかく、価値観の押しつけがすごかった。

今考えてみれば、母がちょうど更年期に入ったくらいで、私たちの学費のこともあるから、体調面でも家計の面でも、いっぱいいっぱいだったんだとわかるけど。

だから、私が結婚したかったのは、早く家から出たい、っていうのもあったんだよね。でも、いざ結婚して離れて暮らすと、なぜか、気持ちが昔に戻ってるんだよ。いやなことは忘れて、また、お母さんのためにがんばってる……。

オット 不思議なもんだ。

けら なのに、じっさい会うと、昔、自分がいつも言われていた「なにやってんの!」というのを、逆にお母さんに言っちゃうんだよね。

オット うーん、それが、この旅行のすべてかもしれないね。「想像のお母さんに夢中」(笑)。

ともかく、お母さんの「東京の家族の話しかしない」「心がイタリアに来ない」問題は、旅行中、ずっと、ひきずることになります。